ゴルフとは「終わらないドラクエ」である

ども、真島ダボです。

ゴルフにハマってから数年が経ちました。自分がこんなにもゴルフに夢中になるとは思いもせず、なぜこんなにも楽しいのか、なぜいつまで経っても飽きないのか、と考えた時、ふと気がついたのです。

ゴルフとは終わらないドラクエである、と。

始まりはひょんなことからスタートする。

「勇者よ、起きなさい。そしてゴルフをしなさい」

どこからともなく不思議な声が聞こえる。

その声の主は、家族だったり、会社の上司だったり、友達だったり、恋人だったり、人それぞれ。

はじめは「ゴルフ?何それ?嫌だよ、めんどくせー。なんでそんなことする必要があるんだよ?こっちは眠いんだよ。だいたいゴルフなんて、金持ちの道楽だろ。それともどっかの社長を接待でもする気か。てめーは島耕作か!そこまでして出世したいのか?この守銭奴が。だいたいゴルフをやるようなやつは、どうせ不倫とかもするような人間に決まっている。てめーは島耕作か!俺はゴルフなんて……うんぬんかんぬん」と誰もが思いながら、しかし、強引にもゴルフというクエストは進行していく。

目次

スライスがあらわれた

とりあえず最初は打ちっぱなし練習場に連れていかれる。

ひのきの棒のごとく、得体の知れない棒切れを渡されて、白い球を引っ叩けと言われる。

周りを見渡すと、おじさん、おじさん、たまに若者。さらに、おじさん、おばさん、おじいさん、おばあさん、おっ若い女の子もいる。みーんな同じ方向を向きながら、一心不乱に何かと戦っているように見える。何かとは、ゴルフだ。ゴルフと戦っているのである。

とりあえず僕も打つ。ひどく不恰好なのが、振っている最中でわかる。難しいぞ、これは。でも、ひのきの棒は一度振り上げると止まらない。そのまま球を引っ叩く。

ドゴーーン!

当たった。飛んだ。まっすぐ飛んだ。あれでも、途中から急に右に曲がっていくぞ。ピューんって感じで、右の緑のネットに突き刺さる。

「スライス!」

たいてい、僕らをゴルフに誘った人はそんな言葉を口にする。スライム?スライス?なんぞ、それ?

もう一度、打ってみる。

力を抜いてみろ、と言われるが、よくわからない。とりあえず握る手は軽く、でも大きなアーチを描くことを意識しながら、もう一度目の前のボールをぶっ叩いてみる。

ドゴーーーーーン!

まっすぐ飛んだ。さっきより力強い。これはかなり気持ちがいい。

かいしんのいちげき?

まっすぐ飛んだ球は今度はそのまままっすぐ進んで、奥の方にある200と書かれた看板のあたりに当たった。

「ナイッショ!」

……あれ、実は……けっこう楽しいかもしれない?

もう一度、打ってみる。

……カスっ。

ボールの頭のあたり、スライムでいうところのニョキっととんがった部分をかすめ取る感じで打ってしまった打球はコロコロと1メートルくらい転がった。ミスだ。そして、白いボールは転んだスライムのごとく、悲しそうにこちらをみている。

やっぱりさっきのは、かいしんのいちげきだったみたいだ。ゴルフ、難しい。でも、もしかしたらゴルフ、楽しいかも。

このあたりからだんだんとゴルフ沼にハマっていく。

4人パーティでダンジョンへ

しばらくするとゴルフ場に誘われる。車に乗って見知らぬ山奥へと冒険に出る。

人々は皆、普段とは違うゴルフウェアという装備を身につけている。かぶと、ぼうぐ、たて、つるぎ……というような感じで、帽子、襟付きシャツ、ズボン、シューズ。

高そうな装備の人もいれば、年季の入ってそうな装備の人もいる。みんなバラバラ。こういうのを選ぶのもゴルフの楽しさなのかも知れないと気づき始める。

特にゴルフクラブには、その人なりのこだわりの装備があらわれている気がする。僕のドライバー、アイアン、パターは人からもらった安そうな装備。さいしょの町で揃えた50Gくらいの代物。ぬののふく、かわのぼうし、ひのきのぼう。

一方、他の3人はなんだかピカピカしておられる。はじゃのつるぎ、プラチナソード、てんくうのつるぎ……強そうだ。しかも、なんだかかっこいい。

そして、よくわからないままティーグラウンドとやらに立つ。他の人の視線に緊張が止まらない。練習場とは違う感覚。それでも僕はひのきの棒を振り上げる。

ピューーん!

練習場の時よりも高く出た球は、知らない田舎の山の中の、綺麗な青い空に吸い込まれて、思っていたよりも遠くの緑色のフィールドに落ちた。

「ナイッショ!」

とりあえず上手く打てたみたいだ。気持ちいいぞ、これ。

チャラララチャッチャッチャー♪

頭の中でレベルが上がった音がする。

あれ、めっちゃ楽しいかも。

僕の次の順番、てんくうのつるぎを持った先輩もティーグラウンドに立つ。すごく飛びそうだ。素振りもビュンビュン音が鳴ってカッコいい。意気揚々とクラブを高く持ち上げる。

「ふぉあーーーーー!!!」

突然、他の二人が謎の呪文を叫ぶ。まるでザラキやメガンテのような、力強いが、しかし悲しみに満ちた呪文。

すると、先輩が打ったボールは、林を大きく超えて、隣の緑色のフィールドにすっ飛んでいった。

僕の2打目。先ほどとは違いアイアンを装備する。父親からもらった、いかにも古そうなどうのつるぎ。これが難しい、しかもボールは坂道にあって上手く当たる気がしない。

案の定、思ったところとは正反対の方向へと飛んでいく。うわ、しかも砂場に入った。これは知ってる、バンカーだ。入っちゃいけない毒の沼だ。

その後も、あっちに行ったりこっちに行ったり。忍者ハットリくんばりに山を越えて谷を超えて、とにかく疲れる。さらに小さなメダル探しのごとく、消えたボールを探しまくる。疲れるぞ、ゴルフ。

なんだかんだで、ようやくグリーンにボールが乗る。パターの出番。小学生の頃、金持ちだった飯島くんの家でお父さんが家の中にパターマットを持っていて、これはやったことがある。

穴に入れればいいだけ。簡単だ。

コン!と音を立ててボールを打ちだす。あら、思ったよりもずっと速い。や、やばい。これは強すぎる。止まれ。止まってくれ!ストーップ!!

…ガシャン

穴に刺さった旗の棒に当たり、球はカップイン。初心者でもこれが奇跡なのがわかった。でも、嬉しい。

10打。

本当は4ターンで敵を倒さなくてはいけないところを僕は10ターンかかってしまった。他の人は5とか6とか。7打の先輩は非常に機嫌が悪い。何かに怒っている。上級者やプロゴルファーはこれを3や4で上がるという。エスタークを数ターンで倒すばりの所業である。

一つのホールが終わると、パーティの4人はドラクエでいうところの馬車のような電動カートに乗り込み、次のダンジョンへと向かっていく。

目指せ!レベル99

僕のスコアは148。酷いのはわかった。

ドラクエはレベル99を目指すが、ゴルフはだんだん数字が下がるゲーム。でも、まず初心者は同じようにレベル99を目指すという。100切りが一つの目標らしい。これは何年経っても達成できない人もいるし、あっという間に達成しちゃう人もいるという。さらにその先に、80台、70台、60台……と未知のレベルが待っている。

でも、誰にでも共通するのは、戦った分だけ経験値が貯まるということ。その経験値が増えていけば、いつかレベルは上がる。良いスコアが出る(とみんな信じている)。それが楽しくて、みんなゴルフをしているのだという。

パーティの面々はそれぞれのタイプがあり、とにかく飛距離がすごい戦士・武道家タイプ、あまり飛ばないけど確実に狙ったところに打つ魔法使い・賢者タイプ、真剣な感じがないのに意外と上手い遊び人タイプなど様々。みんな、自分のタイプに合わせて、また自分の長所と弱点をうまく補おうと努力を重ねながら、ちょっとずつ上手くなっていくのが快感なのだという。

はじめてのラウンドを終えると、早くまた次のラウンドに行きたくてたまらなくなる。

今ではすっかり頭の中はゴルフのことばかり。

新しいダンジョンに向けて、次はどうしよう、この前はこれがダメだったからここを直そう、そのために装備はどうしよう、もっと経験値を増やさないと……考えることは無限にある。

新しいゴルフクラブやゴルフウェアが欲しくなる。そのためにゴールドがないといけない。街のゴルフ屋を巡り、自分の実力と予算を元にどうすればいいか何日間も悩む。その悩みが楽しかったりする。キャロウェイの新作ドライバーを買うべきか?いや、テーラーメイドか?いや、ピンか?こんなに悩むのは、トルネコではじゃのつるぎを手に入れるか問題以来だぞ。

ゴルフという、もう一つの人生

幸か不幸か、恐ろしいのは、健康であれば80歳くらいまで続けられるという点だ。昔、ドラクエ5だったか、「冒険という、もう一つの人生」というキャッチフレーズがあった。

まさにゴルフは人生をかけたゲームなのではないか。そして、今までの人生とは違う、もうひとつの人生が待っている。

会社の上司や同僚、友達、家族、全く知らない人、ちょっと知ってるけど別に仲良くなかった人、たまたま飲み屋で知り合った知らないおじさん、友達の友達のそのまた友達のお姉さん……いろんな人とパーティを組みながら、ゴルフというモンスターを倒すべく、戦い続ける。ゴルフをしていなければ、これまで決して交わることのなかった人が「仲間になりたそうにらこっちを見ている」なんてことがよくある。

そして、それは、おそらく僕らが爺さん婆さんになっても終わらない。

ゴルフとは「終わらないドラクエ」である。

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